2005年 09月 22日
天保12年のシェイクスピア/蜷川幸雄演出
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初蜷川作品、しかも初シェイクスピアもの(といってもパロディ)でした。今までどれだけ偏った観劇をしていたかがばれようってものです。
蜷川作品もシェイクスピア関連も、難しそうで、古臭そうで、ザッツ演劇という感じがイヤで(ごめんなさい…)、今まで食指が動かなかったのですが、歌あり踊りありのエンターテイメント性の高さに4時間の長丁場があっという間でした。
天保12年の日本を舞台に、37のシェイクスピア作品のエピソードをつぎはぎしてひとつのストーリーを作るという斬新な構成(作:井上ひさし)。日本版マクベスやリア王、ロミオやジュリエットが一堂に会しての大騒ぎです。
今まで古典アレルギーだったのですが、古典ゆえに普遍的で、古典ゆえに新しいということを認識させられました。シェイクスピアが生き、シェイクスピアが見、シェイクスピアが描いた世界は、現代となんら変わることなく人間臭くリアル。
善と悪、真実と嘘、生と死、幸と不幸、金持ちと乞食、安定と不安定、救いと堕落。全ての極と極の狭間。
to be or not to be?
絶対的なものなんてない、全てが相対的なこの世界の中、グレーゾーンでうごめくしかない人間の強さ、弱さ、醜さ、悲しさ、喜び。
シェークスピア自身、悟りきって高みから見下ろすわけではなく、グレーゾーンの真っ只中に踏みとどまり、悩みながら必死に白と黒のバランスを取ろうとした人だったからこそ、彼の作品は現代まで愛され、普遍的なものとして存在するんだということがよくわかりました。
こんな俗っぽいシェークスピアなのに、なんで小難しくて高邁なものというイメージで遠ざけてしまっていたんだろう<自分。朗々と長ゼリフを読み上げる、いわゆるシェークスピア劇の旧態依然としたイメージにも一因があるとは思うけど、食わず嫌いの自分をちょっと反省したのでした。
以下キャストにについて
唐沢寿明
一番難しい役どころ。三代次はあまりにも醜くて憎らしくて悲しくて、それを演じきった彼はすごい。
藤原竜也
舞台でははじめまして。数々の評判(天才だとか、色気だとか)を確かめてやろうと思ったのですが(いじわる)、完敗。すごい役者です。おっきな華だなあ。
篠原涼子
楚々と愛らしく。久々に歌声を聴いたけどきれい。他の舞台でももっと見てみたいな。
夏木マリ
さ~す~が~。大好き。エンディングで私の横をすり抜けて行ったのですが、舞台でのオーラの大きさにもかかわらず驚くほど華奢な人でした。あのパワーは一体どこから?
西岡徳馬
色が黒くて常にシャツの胸元がはだけてる感じが苦手かも、と勝手に思っていたのですが、一転ファンに。色気のある方ですね。緩急自在な演技に引き込まれる。
白石加代子
この人のこの存在感、たたずまいは一体何事?
木場雅己
この舞台で一番好きだったかも。愛すべき狂言廻し、出ずっぱりでご苦労様でした。
それにしてもなんて贅沢なキャスト!
by taira5577
| 2005-09-22 00:51
| 演劇