2005年 08月 01日
インフルエンザと狂牛病が教えてくれること
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鶏インフルエンザや狂牛病、ちょっと前は口蹄疫やヨーネ病など、数々の伝染病に見舞われ大変な畜産業界ですが、これは肉や乳製品を食べるということについて考え直しなさい、っていうメッセージじゃないかという気がしてます。
鶏にしろ豚にしろ牛にしろ、それが私たちの口に入るまで、動物としてかなり不自然な育てられ方をしています。狭いところに押し込められ、運動もせず、肥育のために不適切な食餌を与えられる。こんな環境で、病気にならない方がおかしい。
乳牛を例に取ると、牛は本来は反芻動物。私たちには全く消化吸収できない草のみで生きている動物です。反芻を繰り返し、そしておなかの中に住んでいるたくさんの微生物たちの力を借りて、草を消化し、血肉にしているのです。
でも乳牛として利益を出すためには、濃くて大量の乳を出さねばなりません。薄利多売のため頭数がいないと話にならないので、狭い牛舎での多頭飼育。本来の牛の食べ物ではない穀物や豆類、時には肉骨粉(それって共食い?)までも食べさせて、乳中の脂肪量を増やします。のんびり草原で草を食んでいる場合ではないのです。
その結果、乳房炎、脂肪肝などの病気は「あってあたりまえ」となりました。この状態を頻繁な薬の使用でどうにか押さえこむのですが、常に病的な状態なので病気に対する抵抗力が働かず、ひとたび伝染病が入るとすぐに蔓延するのです。
ウイルス、細菌、プリオン。たとえ病原体が判明したとしても、環境が変わらない限り病気は出続ける。たとえ治療法が編み出されても、また新たな病原体が出現するいたちごっこ。
畜産業者を責めるのは簡単だけれど、畜産業者は消費者の「とにかく安く」という希望を忠実に反映しているにすぎません。消費者と生産の現場の狭間にあって、一番苦悩しているのは現場の人たちではないかと思います。
学生時代に牧場実習をしたとき、借金や伝染病発生を苦にしての夜逃げや自殺などの話をときどき耳にしました。北海道ののどかな風景の中だけにいまいち現実感がなく聞いていましたが、ピリピリした現場の雰囲気(ある法定伝染病が発生した)を目の当たりにしてなんとなく理解できました。
そして3年前、狂牛病を診断した若い女性獣医師がひとり自殺しています。彼女が「陽性」の診断を出したらその牧場は潰れかねない。その苦悩はどれほどのものだったか、わかる気がします。
スーパーに並ぶ肉たちのそんな背景を知ってか知らずか、「肉が高くて困る」という主婦がニュースで取り上げられるたび、腹立たしいような悲しいような気持ちになります。
肉はもう、超高級品になっちゃえばいいんだと思います。本当に特別なときに、ありがたーくいただく食べ物に。そしたら牛も、それを世話する人も、そして私たちも健康で幸せになれるんじゃないか、とひそかに夢想しています。
鶏にしろ豚にしろ牛にしろ、それが私たちの口に入るまで、動物としてかなり不自然な育てられ方をしています。狭いところに押し込められ、運動もせず、肥育のために不適切な食餌を与えられる。こんな環境で、病気にならない方がおかしい。
乳牛を例に取ると、牛は本来は反芻動物。私たちには全く消化吸収できない草のみで生きている動物です。反芻を繰り返し、そしておなかの中に住んでいるたくさんの微生物たちの力を借りて、草を消化し、血肉にしているのです。
でも乳牛として利益を出すためには、濃くて大量の乳を出さねばなりません。薄利多売のため頭数がいないと話にならないので、狭い牛舎での多頭飼育。本来の牛の食べ物ではない穀物や豆類、時には肉骨粉(それって共食い?)までも食べさせて、乳中の脂肪量を増やします。のんびり草原で草を食んでいる場合ではないのです。
その結果、乳房炎、脂肪肝などの病気は「あってあたりまえ」となりました。この状態を頻繁な薬の使用でどうにか押さえこむのですが、常に病的な状態なので病気に対する抵抗力が働かず、ひとたび伝染病が入るとすぐに蔓延するのです。
ウイルス、細菌、プリオン。たとえ病原体が判明したとしても、環境が変わらない限り病気は出続ける。たとえ治療法が編み出されても、また新たな病原体が出現するいたちごっこ。
畜産業者を責めるのは簡単だけれど、畜産業者は消費者の「とにかく安く」という希望を忠実に反映しているにすぎません。消費者と生産の現場の狭間にあって、一番苦悩しているのは現場の人たちではないかと思います。
学生時代に牧場実習をしたとき、借金や伝染病発生を苦にしての夜逃げや自殺などの話をときどき耳にしました。北海道ののどかな風景の中だけにいまいち現実感がなく聞いていましたが、ピリピリした現場の雰囲気(ある法定伝染病が発生した)を目の当たりにしてなんとなく理解できました。
そして3年前、狂牛病を診断した若い女性獣医師がひとり自殺しています。彼女が「陽性」の診断を出したらその牧場は潰れかねない。その苦悩はどれほどのものだったか、わかる気がします。
スーパーに並ぶ肉たちのそんな背景を知ってか知らずか、「肉が高くて困る」という主婦がニュースで取り上げられるたび、腹立たしいような悲しいような気持ちになります。
肉はもう、超高級品になっちゃえばいいんだと思います。本当に特別なときに、ありがたーくいただく食べ物に。そしたら牛も、それを世話する人も、そして私たちも健康で幸せになれるんじゃないか、とひそかに夢想しています。
by taira5577
| 2005-08-01 14:11
| 獣医のしごと